近ごろはずいぶん暖かくなってきましたね。各地で桜の花もほころび始めました。桜の花は今まで私たちに卒業や入学、出会いや別れなどたくさんのイメージを運んできてくれています。映画や小説、歌などの中で様々なかたちで表現されてきました。
桜が出てくる映画で思い浮かべるのは“桜の園”と“桜の森の満開の下”です。また最近では“さくら”というヒット曲もありましたね。それらの多くは、桜をどちらかというと散ってゆくはかなさに重点を置いた表現が多いように思えます。それは日本独特の散ることへの美しさというものから来るのかもしれません。
桜が散るのは本当に美しいのですが、満開の桜は私たちに惜しみ無くその美しさを咲かせてみせてくれます。誰もがその美しさに憧れ、その桜の木の下で花見の宴会を開いたり、私たちを楽しませ和ませてくれます。そしてそれらの宴が終る頃、桜の花は散ってゆきます。まるで私たち人間を楽しませるために生まれてきたかのように。そんな時私は、桜のように人を楽しませたり喜ばせたりすることが、絵を描くことでできているのだろうかと考えます。そして私は生きている間、どれだけの人にそれを伝えることができるのだろうかと。春になるといつも桜の花の美しさに感動し、元気付けられ力をもらいます。美しい花を見る喜び、人生に於いてはほんのささやかな喜びですが、このささやかな喜びを私は絵に託していこうと思うのです。
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