言葉や歌にはそれを現わす人の心、思いが含まれています。その人が発する言葉や音をひときわ高い荘厳へと導くものは、その深い戦慄に宿るメロディと真の心ではないでしょうか。そしてそれがしっかりとした意志による言葉として発せられた時、その言葉が言霊(ことだま)となって人の心の中に響くのだと思うのです。
絵に於いて色と色が響き合い、様々なグラデーションを作り上げる時、色彩が奏でる無限のメロディーが生まれ、その中に揺るぎない意志という光が加わり、絵にもまた魂が宿るのだと思います。そしてそれは偶然や無意識の中からできるものではなく、絵や音楽や言葉を発するということは、その中に宿る魂の響きを他へと伝えてゆくことではないでしょうか。
言葉には人を喜ばせる言葉もあり、人を傷つける言葉もあります。私を含めて人は生きていく上で病気や死、また今ある環境から逃れられない苦しみや、自分を飾る甘えや捕われから、抑え切れない衝動や言葉を他にぶつけてしまうことがあると思います。それを胸の中奥深くに沈め、乾いた大地に水がしみ入るように、いつの日か心の痛みを希望の光に変えてゆく智慧の種が芽生えることを私は信じたいのです。凍えるような寒さを知った者にこそ、本当の春の暖かさがわかるのだと思います。冬を越して咲く桜の花のように。
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