ピカソやマティスの絵は、見たままのものからイメージされたものを重ね合わせることにより、ひとつの意志が加わりそれがデフォルメされ、そして形がどんどん変形されて生まれて来ました。これらの絵は見た目だけ(表面だけ)をまねすることは誰にでもできますが、その中に含まれた深い意志はまねできません。
ほとんどの子供の絵は左脳で描かれていますが、右脳が働いた素晴らしい絵は、その時の子供にしか描けない線を出します。それが大人になるにつれて形や常識がととのってゆき、子供の頃の常識をはずれた感性を忘れてゆきます。その感性を意志により大人になっても描こうとすると、優れたデッサン力と子供のまなざしが必要なのです。ピカソはこれを目指し、そして描いた数少ない天才です。子供の感性というのは心が美しいとか純粋というような精神的なものを指しているのではなく、生きてゆくうえでの経験が少ないため大人では考えられない行動や動き(表現)をするということです。
絵の中にアウトサイダーアート(主に知的・身体的障害者の絵を指します)というものがあり、この中には素晴らしい絵があります。それは大人になっても子供のまなざしを持ち続けている絵で、これらの絵は具象的な絵画とは一見掛け離れているようですが、そこには自然に対する同じまなざしが注がれています。
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