今、アートとイラストレーションが成熟した繁栄期を迎えようとしています。特に3Dの発展は目を見張るものがあります。印象派以前は、人々のアートに関する思考がほとんど同じ方向を向いていましたが、今はアートというガラスの像が崩れ、無数のアートの破片が飛び散り、個々の様々な方向に無差別に向いている状態で、その中で新しい感性が生まれているかんじです。
主観的な絵もピカソ以降、年月をかけて一般的に認められるようになり、誰もが好きなように絵を描くことができる時代になっています。またコンピューターの普及により、アートの写実的な垣根が低くなり、昔はまっすぐな線を引くことや、ムラなく色を塗ることさえ苦労しましたが、そのようなアートにおけるさまざまな技術的な壁はコンピューターによってクリアーされました。
数十年前と比べると、絵を描く人は何倍にも増えています。そしてビジュアル的にもかなりの発展を遂げました。音楽でアマチュアがお金を手に入れるのは、ライブ活動にしてもCDを出すにしても、まだまだ垣根は高いのですが、アートに関してはコンピューターやプリンターの普及などもあり、ポストカードやちょっとした画集などは個人でも簡単に作れます。
またフリーマーケットやアートフェアーが盛んになり、たくさんのセミプロを生み出しましたが、私はこれはいいことだと思います。多くの人が自分の描いた絵によって、少しでもお金を手に入れることができるということは、個人個人の主観的なイラストやアートが認められたことになります。それらは個々が尊重される時代へと繋がるのです。
人類が豊かになるには、アートはなくてはらないものだと思います。しかしアートが増える一方で、アートだけで充分なお金を手に入れることが難しくなってきました。それはしかたのないことです。それを補うには様々な引き出しを持ち、臨機応変に対応していくことでしょう。昔は絵を描いてお金を手に入れることができるのは、ごくわずかの限られた人だけでしたが、今はたくさんの人が自分の描いた絵でお金を得ることができる時代になりました。これがいちばんすばらしいことなのです。 |