ディスカス
「ソロモンの指輪」で知られる動物学者のロ−レンツ博士に“一生に一度は飼ってみたい魚”と言わせたディスカスは、熱帯魚の王様としてふさわしい貫禄を備えています。
ディスカスの生息地は水深1メートルくらいの流れのない細流で、水の中に倒れ込んだ木の下や水中にまで伸びた樹木の根や枝の影、大きな蓮の下など直射日光を避けるように生息しています。
魚の顔や形はよく見ると一匹一匹違うものですが、ディスカスほどはっきりと違いがわかる魚も珍しいと思います。また、個々の個性もかなり強く、ちょっとしたことで身体か黒ずんだり、餌を食べなくなったりと、大変気難しい面もあります。特にやっかいなのはストレスが溜まることで、外見上は別に何でもないのに、死に至ることもあります。このディスカスのストレスを直す薬は飼育者の愛情でしかないでしょう。
ディスカスの王者たるゆえんは外見上の美しさもさることながら、飼育繁殖のダイナミックさにもあります。私は水草水槽での飼育をやっていましたが、その中でちょっとした工夫はハンバーグ(ディスカスの餌)をやる時、口に入る程の大きさに指で丸めてひとつずつ目の前に落としてやると、パクパクと音をたてて吸い込むようにして食べます。この方法だと水は汚れませんが、大食漢のディスカスを満足させるには、かなりの時間がかかります。私は7匹いるディスカスに餌をやるのに、30分はかかりました。
ディスカスは描く上でももっとも難しい魚のひとつで、ターコイズディスカスの色彩はモルフォ蝶を彷佛させます。そしてブルーグリーンの体色の複雑な色合いや縦縞と横縞が交差しているところなど、考えると頭が痛くなってきます。おまけにディスカスの鱗は大きくもなく、小さくもなく、いちばん描きずらい大きさなのです。ディスカスは描くにしてもなかなか簡単には描かせてはくれません。
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