イエローコンゴー・テトラ
アフリカのコンゴ河、ニジェール河にアフリカン・カラシンのほとんどの種が生存しています。以前テレビでニジェール河の猟師の底引網漁を映していましたが、網に入った魚の90%以上がブリシヌス・ナースに似た中型のカラシンで、その他はタイガーフィッシュ1匹、シノドンティス2〜3匹、背ビレのトゲがかなり発達した南米のピンタードのような魚が1匹入っていました。
昔地球はひとつの大陸で、アフリカと南米は陸続きであったことから、このふたつの大陸を合わせるとアマゾン河はほぼニジェール河に位置します。したがって両者の魚種は似通ったものが多いのです。オスティオグロッスム目によっても、南米にシルバーアロワナ、アフリカにヘテロティムスとその起原が同じであることを示しています。アフリカにいて南米にはいない鯉目に関しては、このふたつの大陸が分断された後、ユーラシアからアフリカに入ってきたのだと思います。よって鯉亜目はカラシン亜目に比べて新しい種と言えます。
私が飼育したアフリカン・カラシンの中で特に印象に残っている魚は、イエローコンゴー・テトラです。この魚は透明感が強く水草レイアウトにマッチします。コンゴー・テトラに比べてイエローコンゴー・テトラは一見地味ですが、その地味な魚が発情し婚姻色を出すと、アフリカン・カラシンで最高のフィンスプレディング(二匹が身体をブルブル震わせること)を見せてくれます。まるで魔法にかけられたシンデレラのように美しく変貌します。まずエラブタの後方に暗色斑が現れ、体表の透明感の強いレモンイエローがみるみる赤黒くなり、尻ビレもほんのり赤みを帯びてきます。それによって背ビレ、尻ビレ、尾ビレの白と黄色がくっきりと浮かび上がってくるのです。そして背ビレと尻ビレを90度にピンと立てて身体をブルブルふるわせながら回転し、その震えている身体をくねらせるたびに、体表がレモンイエローからブルーにキラキラと輝きます。この光景を初めて見た時にこの魚の本当のすばらしさがわかります。
これに匹敵するのは、南米のロバーティが完全に成熟した大きさになった時に見せるフィンスプレディングです。しかしイエローコンゴーの難点は、かなり臆病な面を持っているところです。ガラスに顔を近付けるだけで水草の後ろに隠れてしまったり、最悪の場合はガラスに顎を強くぶつけてしまうこともあります。
フィンスプレディングの回転行動がいちばん大きいのは、ブラックファントムだと思います。ロバーティの場合はあまり回転しませんが、ブラックファントムが4〜5匹水槽の真ん中で回転しながらフィンスプレディングする様子は圧巻です。フィンスプレディングを知らない方は、ぜひ一度これらの魚を飼ってみてください。新たな熱帯魚の魅力に気付かされると思います。
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