薔薇の名前 / 1986年フランス・西ドイツ・イタリア
この映画は中世の雰囲気をみごとにつくり出しています。ひとつの世界を作るということがどういうことなのか、この作品は語っていると思います。特に私が魅せられたのは、修道院の写字室のシーンです。写し出された小道具や写本などに、私は釘付けになりました。それらを見ただけで、この監督の異常なほどの美術へのこだわりが伝わってきました。映画はストーリーも大事ですが、見るものですから映像のリアリティから発せられる空気感や臭いのようなものがもっと大切です。SF的なリアリティーを出すよりも、史実にのっとった時代劇のリアリティーを出す方が難しいかもしれません。このような映画は見れば見るほど新しい発見があります。役者に関してはショーン・コネリーも素晴らしいのですが、それ以上にその他の登場人物の個性的なキャラクターがこの映画をいっそう引き立てています。
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