Ian Walton, Russell Mills / KYOTO SHOIN
学生時代、ラッセル・ミルズのような感性が好きで、錆びた鉄を飾ったり、朽ちた木やペンキで汚れた看板などを部屋に掛けていました。自然の力や時間によって風化して枯れるものの中には哀愁やロマンチズムなどの退廃的な臭いがあり、きらりと光る怪し気な美しさを見せる時があります。その感性はマーク・ダイオンなどにも繋がるものがあり、また1枚の絵画としてだけではなく、ジョセフ・コーネルなどは箱や部屋などをひとつの空間として現わしました。近いものに理科の実験室、錆びれた工場、画家のアトリエなどの個室や小屋などの空間には同じような臭いがあります。私の父は映画の看板を描いていたので、仕事場の壁や床に様々な色のペンキが飛び散っていたり、錆びた鉄くずや釘やトタン、ペンキの缶やシンナーの瓶、鉄のはしごに糸のこぎり、壁には画鋲で止められた無数の映画のポスターやスチール写真、きわめつけが描きかけの映画の看板とその横には上映が終わり引き裂かれた看板など、今思い出してもわくわくするような情景がありました。今では映画の看板を描く職人も少なくなり、このようなプロフェッショナルの仕事場を見る機会がなくなったことを残念に思います。 |