宇和島を出てからもう26年、今ではこちらの暮らしの方が長くなってしまいました。両親もこちらに来ているため、今は宇和島には実家はありません。帰省した時はホテルに泊まるのですが、故郷に帰ってホテルに泊まるのは何となく淋しくなります。
そんな時、気持ちをほっとさせてくれたのは、今でも変わらないお城の明かりでした。宇和島に着く頃はいつも夜の9時頃で、予讃線の終着駅なので降りる人もまばらです。静まりかえった駅前に立った時、遠くに見えてきたのはライトに照らされた昔のままのお城の姿でした。
私は城山の近くに住んでいたこともあり、お城にはよく行きました。夏休みの課題などには一人で城山に登り、石畳や木々などを描いたのを覚えています。
18年間過ごした宇和島を歩く時、町のところどころの昔ながらの店や路地などに、あの頃の自分の姿が影法師のように浮かんできます。以前私が住んでいたところは今でもほとんど変わっていませんでしたが、道幅や家などがなぜか小さく見えるのです。
宇和島を出ることによって、私は故郷の良さを知ることができました。故郷が時とともに変わっていくのは淋しいものですが、夜空に浮かんだお城の明かりは帰るたびにいつも私を暖かく迎えてくれます。
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