初めて飼った魚は、と聞くとまっ先にあがるのが金魚だと思います。私達日本人の生活に古くからなじんできました。金魚は日本に来て500年にもなります。その前は中国で、1700年も前のフナの突然変異のヒブナ(赤いフナ)が金魚の祖先と言われています。それから気の遠くなるほどの長い歳月をかけて、現在のような金魚になったわけです。夏になると風鈴や団扇などに金魚をデザインしたものをよく見かけます。金魚は日本の夏のイメージによく合う魚です。
その夏が私は大好きです。あの眩しい光の強さが好きなのです。宇和島の夏の日ざしはとても強く、空気はカラッとしていて、日陰は涼しく気持ちがいいです。小さい頃、夏の熱い日に外で遊んだ後に飲む、水道の水がおいしかったのを忘れません。
夏にはたくさんの想い出がありますが、今でも強く印象に残っていることがあります。それは生まれて初めてコブナを採ったことです。夏の暑い日、田んぼの脇の小さな水路でした。その周りには水草や雑草が青々と茂っていて、水面は眩しく輝いていました。
水草の中に片足をつっこんで、魚を追い込みながら採るのですが、その日はなかなか採れませんでした。そして今度もだめかなと思ってすくい上げた時、網の藻の間から小さくキラッとした物が見えたのです。それが5cm程の小さなコブナでした。そのコブナが夏の太陽の光に照らされて、今度はギラッと輝いたのは、今でも脳裏に焼き付いています。
それからもたくさんの魚を採ったのですが、あのコブナの輝きほどの強い印象はないのです。そんな懐かしい想い出や小さな記憶が、私が夏を好きな理由のひとつかもしれません。 |