アクアリウムレイアウトと絵画について
私は具象絵画は構成と技術だと考えています。卓越したすぐれた技術は、それだけでもオリジナリティにつながります。アクアリウムと絵画の関係は、構成は言うまでもありませんが、技術に関しても形こそ違いますがトリミングや水草の成長を見る目など、長年培ってきた技術はその人のオリジナリティとなってゆきます。
絵画における構成の構図や色彩は、ほとんどがアクアリウムにも当てはまると思います。たとえば、水草の色彩の範囲は緑から赤にかけての暖色です。アクアリウムの中に青から紫にかけた寒色の色彩が入ると色の幅が広がります。これらの色彩をバックスクリーンとして用いると、アクアリウムの中が華やかなイメージになってきます。バックスクリーンに色を塗る時、1色でベタ塗りをするのではなく、グラデーションで描くと自然な感じになるでしょう。
アクアリウムにおいての遠近法はどれくらい可能なのでしょうか。普通の水槽では奥行きが45cm足らずなので、遠くのものほど小さく見えたりする消失点を定めたような遠近法はなかなか使えません。また、遠くのものほどぼやけて見える空気遠近法も使えませんが、色彩による遠近法はどうでしょうか。寒色は後退し、暖色は前に出ます。光によって黒は縮まり、白は膨張します。これらのことをアクアリウムに用いてゆけば遠近感は出てくると思います。
具体的に言いますと、赤の水草を緑の水草の前景に置いたり、色の濃いグリーンは後に、明るいグリーンは前にレイアウトすると遠近感は出ると思います。またパースのかかったような強い遠近感は水槽ではなかなか出せませんが、水槽の両サイドに水草のボリュームを持たせて、中心に凹型の空間を作ったり、2つの岩を前から見た時、重なり合うようにして置くと前後の距離感が出ます。
アクアリウムの構図に関してですが、構図の比率を示すもので黄金比というものがあります。これは主題となるポイントの位置が、全体の中で6:4のところに置かれているものです。バランスがとれているなあと思うと、だいたい6:4になっていたりします。ポイントがひとつの時は黄金比でいいのですが、2つ3つと増えてくるとわからなくなってきます。そんな時、全体のバランスを見るのにやじろべえを思い浮かべてください。ふつうやじろべえは同じ長さの手に同じおもりをつけてバランスをとっていますが、片方の手を短くした時は重いおもりを付けます。片方の手を長くした時は軽いおもりを付けてバランスを取ります。このように、左右対象ではないバランスの取り方をレイアウトでは使ってゆくといいと思います。アクアリウムの中心がやじろべえの中心と考えてレイアウトしてみてください。
私が絵を描く時、頭を悩ませるのが魚の位置と大きさです。同じ魚でも大小で遠近感は出てきます。絵画では魚が構成の重要な要素になってきますが、実際のアクアリウムでは魚は生きて動いていますので、構成の中には含まれません。しかし写真を撮る場合、魚の位置には気をつけた方がいいと思います。隅の方に魚が片寄っていたりすると、レイアウトのバランスを崩してしまいます。レイアウト写真では、魚の泳ぐ位置や方向が絵画と同じく重要なポイントになってきます。それは魚の泳ぐ方向などが、レイアウト全体の流れとかかわってくるからです。生きた魚を自由にあやつるのは難しいことですが、私はレイアウト写真ではいちばんのポイントだと考えています。それはレイアウトを作る際に、どういう魚をどう泳がせたいかをまず初めに想定しなければならないと思っているからです。アクアリウムレイアウトはそう考えれば考えるほど深いものになってゆきます。このように絵画とアクアリウムは構成においてもよく似ており、アクアリウムがアートと呼ばれるのもうなずけます。
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